医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その47平成29年5月10日

彼女は、当院が開業して4年過ぎた頃から通院してくれていた。たくさん圧迫骨折していて、背中がまあるくなっていた。糖尿病を患っていて、検査と投薬のために毎月来院されるがコントロールも良く、「元気ですか?」「元気です。」という会話くらいしかしない。そうして5年が過ぎた。

85歳を過ぎてくると、摂食量がぐっと減って、急に血糖値のコントロールが悪くなった。自分で身の回りのことが十分に出来なくなると食事が乱れる。服薬も曖昧になる。高血糖が続き、急に低血糖発作も起こす。娘さん達が介入し、介護保険の認定申請をし、生活の見守りや手助けをする体制が必要となっていた。「子供の世話にはならず、自分で何でもする」ことに拘っていた彼女は、少し寂しそうだった。でもお陰で、生活は安定し、病状も安定した。

88歳になって、尿に血が混じるようになり膀胱癌が発覚した。詳しい検査や入院しての治療は頑なに拒否した。二人の娘様が交互にお世話しに来てくれて、1ヶ月に1回の通院を続けてくれた。

いよいよ食べなくなって、いよいよ動けなくなった5月の連休明け、訪問診療が始まった。始まって3日目の朝、呼吸が止まっていた。穏やかな、だけど意志の強い表情だった。「自分」を貫いた人生だった。