医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その46平成29年4月6日

定年を65歳で迎え、ようやく自分らしくゆっくりした生活が出来ると、庭の手入れやメダカの世話を楽しんでいた矢先、黄疸に気付き受診、膵臓がんと診断された。もう既に、胆管も詰まりかけていて、胆嚢も腫れていた。肝臓にも多くの転移巣があった。急性期の処置だけは受けたものの、もうそれ以上の治療は望まないと言った。

腰の悪い、ちょっと姉御肌の奥様が「あんまりよう世話出来んけど、家で居りたいやろうと思って」と、在宅ホスピスを希望された。急にすごーく痩せてしまった彼を心配そうに見る。消化器系のがんは食べられなくなるのが辛い。角っこの家で、近所の人もよく覗きに来て、差し入れも多いけど、食べられない。食べられないけど食べたい気持ちはある。元気な時、割り下担当だった彼は、味付けしただけにすき焼きは食べた、ちょっとだけど。

ちゃんと歩けなくなっても、トイレに行こうとする。それで転けて、近所の人に助けてもらう。無口な彼は、人懐っこい表情で笑う。奥様は気兼ねして怒っている。

丸2ヶ月、訪問の度に「大丈夫だよ。」と彼は答えた。「調子は?」と訊くと「まあまあ。」と答えた。少しずつ酸素飽和度が下がっていったが、そんなに呼吸は乱れなかった。奥様がずっと傍に居てくれたから、気丈夫だったのかな。39℃の発熱した日の夜、いつもの生活の中で、彼はこの世を去った。