医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その45平成29年3月6日

68歳の彼は、薬剤師になった娘さんがずっと自慢だった。「鳶が鷹を生んだ」と、嬉しそうに話した。実際、彼女は父の病状を的確に把握し、全てのことを仕切ってくれた。

1年前から喉の不調を感じていたのに、それから2ヶ月もしてから検査を受けたという。声帯から食道にまで広がるがんと診断され、病気の全てを告知してもらい、余生を家で過ごしたいと訪問診療を希望、紹介されてきた。

物静かで多くを語らないけれど信念を持っている人だった。「余計なことはせず、居られるだけは家で居たい。でも最後は病院に運んで欲しい。迷惑はかけたくないから。」何も無理は言わず、静かに酸素をしながら寝ていて、時の流れを待っているみたいだった。

最後の4日間は四六時中の見守りと手助けが必要だった。誕生日の7日前だった。きっと命が持たないと思ったのか、5日早く誕生日祝いをし、ケーキを前に家族みんなで写真を撮った。

予測していた日に電話が鳴った。訪ねると、穏やかな表情の彼の傍らには、家族みんなの涙いっぱいの表情があった。「1時間前くらいです、父が息をしなくなったのは。」「私達3人でしっかりお別れを言いました。」気丈に伝えてくれる二人の娘さんと奥様が、やけに痛々しく思えた。