医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その89令和4年9月13日

44歳の彼女は実家に帰ってきた。働き盛りの旦那様が末期がんの妻の在宅療養を支えるのは難しい。実母は「一緒に過ごせる時間がもらえて嬉しい」と迎え入れた。母もまた昨年夫(つまり彼女の父)をがんで亡くしたばかりだった。

約2年前、子宮肉腫と診断された。子宮や卵管を摘出し抗がん剤治療にも耐えたが、1年半で根治不能と判断された。脳、髄膜や肺に次々と転移し、1ヶ月前ついに意識障害、頭痛のため緊急入院となった。コロナ禍で面会も出来ない中、家族に会いたくて在宅療養を選んだ。

「自分で歩いてトイレに行きたいな。」「やりかけていたクロスステッチやりたい。」脳転移巣がたくさんあってすぐ脳が浮腫んでしまうが、ちゃんと会話出来る時間もあった。母との二人暮らしは気儘で楽しげで、量は食べられないが好きな食べ物を楽しんでいた。

急に発熱したリ、夜中に腹痛を訴えたり、看護師は毎日訪問した。下痢便秘もあって下のお世話も大変。足が攣るからマッサージも。母とほぼ一心同体状態で、2週間が過ぎた。

「呼吸がおかしいです」と、落ち着いた母の声。電話を受けた看護師はすぐ私を呼んだ。「家で、居られて良かった。」泣かない母が、痛々しかった。旦那様や息子さん達も見守る中で、呼吸が静かに止まった。