医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その87令和4年7月6日

もう12年も前かぁ、彼女が「腰が痛い」「膝が痛い」とうちのクリニックに通院するようになったのは。内科的には何にも異常がなくて、血液検査ではいつも満点。なのに、いつもどこか「痛い」と訴えている。

彼女の頭痛には悩まされた。おかけで頭痛に関する漢方薬にはやたら詳しくなった。

7年前、ようやく彼女の訴えと異常所見が一致した。「右の鎖骨の辺りが痛い」の訴えから小さな肺がんが見つかった。それからずっと、市民病院で治療を受けながら、うちにも定期受診されていた。なにせ、他にもあちこち痛いので。

この7年間に、がんは大きくなったり小さくなったりしながら、でも消えはしなかった。腎臓も心臓も少しずつ、年齢相応に悪くなっていった。食事が進まず、痩せて、適宜点滴が必要になった頃、訪問診療に切り替えた。85歳になっていた。

彼女の口癖は「息子達に迷惑かけたくない」だった。遠慮して、本当にして欲しいことを言わないので余計に厄介。ごめんごめんを連発。目をつむって手を合わせている。「ごめんじゃなくて、ありがとうだね」。在宅診療で4ヶ月頑張ったが、転倒を繰り返すため目が離せなくなって施設で療養する事になった。その頃には、ありがとうありがとうを連発。うん、その方が良い。

穏やかな時間だったと思う。他の入所者様とも仲良く過ごしていた。でも、1ヶ月経たないうちにあっけなく逝ってしまった。私の手をしっかり握りながら。