医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その83令和4年3月25日

こめかみをツンツンしながら「頭痛いアピール」。84歳の彼は、ちょっと頑固者。怒らせたら怖そうで、精一杯優しく言う。「効くようにお薬出しますね~。」すると満足気にうなずいてくれる。

昨年8月胃がんと診断され、内視鏡下で切除し完治。今年11月肺がんと診断され、症状はないけど、今度は重症?!すぐ当クリニックにがん末期に対する訪問診療の申し込みがあった。

どんどん病状が悪化し派手にがん闘病が繰り広げられるイメージとはほど遠く、毎日は平穏。週1回の訪問診察と3回の訪問看護が始まり、人の出入りは多くなったが、彼の病状は変わらない。いつもバイタル測定と、食事内容と排便排尿のチェックだけ。こんなんで良いの?と拍子抜けしている妻は、「がんって違うかったんかな。」と繰り返す。「急に症状が出てくるから、今はこの元気な時間を楽しんで。」「今は最期の時間を家で過ごせるように下準備してるんだよ。」と説明する。

島津亜矢という演歌歌手が好きらしく、その人の唄が一日中かかっている。カンパンが食べやすいのかいつも手元に置いてある。4ヶ月ほど経ち、看護師達にもすっかり慣れたある日、急に唄を嫌がり、カンパンが減らなくなった。ひとりで立てなくなり寝付いてしまった。目は開けていてうなずくが、発語はない。家族が入れ替わり立ち替わりさよならをして、朝から呼吸がおかしくなったその日の昼に、心臓が止まった。

親族ほぼみんなに見送られ、大好きなお家で、ちゃんと最期を迎えられた。