岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス
81歳になるのに、なんか色気あって可愛い女性。昔、Barのママしてたせいかしら。
初めてクリニックを受診されたのは、もう5年も前、膝痛で。半年ほどで痛みがなくなって来なくなった。1年前、ひょっこり来院、「がんになりました」と。訊くと3年前から闘病、直腸がんを切除しその後再発、標準抗がん治療を終えたところだった。
家で療養するにあたり、「先生、家に来てね」とにっこり言う。なのに、申し込みをしたまま、また半年連絡がなかった。症状に進行がなく、病院に通院出来ていたらしい。いよいよ余命1ヶ月と宣告を受けて、今度は本当に在宅ホスピスが始まった。
腹膜播種、卵巣転移による腹水、腹痛があって、十分に食べられない。元々細い方だったが、痩せて小さくなっていた。年下の旦那様が、いつも甲斐甲斐しくお世話してくれる。仲のいいご夫婦、それだけで素敵。気丈な彼女は、動けないくせに自分でトイレに行くと言い張りベッドに戻れなかったり、「寝てたらあかん、起きとかな。」と無理に身体を起こしていたり、食べて美味しかったら食べ過ぎちゃって吐いたり。精一杯‘生き’ていた。そんなことが出来る力、残ってたっけ?。そして耳打ちする。「ほんまはな、早う死にたいんよ。絶対、ここで死なせてな。」
その日も、「しんどいわ、言いたくないのに言うてまう。」と笑っていた。いつもの身体を起こした姿勢のまま、反応がないことに旦那様が気付いた。ご家族が見守る中で、静かに静かに呼吸が止まった。