岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス
開業して半年、もう20年前になる。膝が痛い彼女が受診された。週に3.4回リハビリに通い、足底板をオーダーした。4年経った頃、喘息発作を起こすようになった。他医で治療を受けていたが、あまりに頻回で吸入薬の治療を勧めた。それからほとんど起こさなくなった。7年経った頃、不意に肋骨骨折を起こした。骨粗鬆症の治療が始まった。
それからずっと、82歳になった今も、膝は相変わらず痛いが自力歩行出来る。いつも笑顔で、2週毎にヒアルロン酸製剤の関注にやって来た。待たされる日もあっただろうに、文句一つ言わない。全面的信頼してくれていて、だからこそ全身管理は決して怠るまいと、定期的に過不足なく検査してきたつもりだった。
今年5月「久しぶりに喘息発作が出たみたい。お世話かけます。」と遠慮がちに定期以外で来院した時も、いつもの気管支拡張薬の点滴すれば治るわ~くらいの軽い気持ちだった。なのに一向に良くならず、吐きながら来院した次の日に、いつもと違うことがわかった。先月まで採血検査で何一つ異常値のない彼女にも、腹部CT検査をしておくべきだった。一目瞭然、肝臓に無数の転移がん、既に膵臓がんの末期だった。
すぐ病院には紹介受診したが、在宅ホスピスを勧められて帰ってきた。「最期は純子先生に診てもらう」が口癖になっていた彼女は、訪問診療が始まるのを少し喜んでくれた。ならば、せめてもう少し長く、お世話させてもらいたかった。たった、たった1ヶ月足らずで、さよならなんて。