医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その75令和3年5月17日

男性の平均寿命が81歳、それから考えると89歳は長生きだ。彼は身体が大きくて大きな声で話すから、ますます若く見える。大きな病気一つせず、元気に過ごしていたはずだが、急に頑固な便秘になった。それで初めてお腹の中を調べて、胆管がんがかなり進行していることが判った。

それが2月で、私達に紹介されてきたのが3月。家でも動くのが好きだった彼が、介護ベッド上でじっとしている。自分の意のままに家を動かしてきた彼が、思うように動けなくなっていた。

予定した訪問看護がちょうど眠い時間に入り、しんどい思いをしながら入浴したことをきっかけに、小さくて華奢な奥様と体格の良い息子様は、彼の好きな時に二人で入れてやりたいと言い出した。息子様に世話になるのは、恥ずかしいながらも嬉しい様子だった。でもある日、お風呂場ですってんころり、看護師と4人がかりで抱えてベッドに戻した。

チョコレートが大好きで、何かが自分で出来た時にご褒美に口に入れてもらっていた。マイウェイな療養スタイルだった。それでも、何かあったら看護師や医師が駆けつけてくれるという安心感は確かにあったらしく、このコロナ禍で入院をしてしまうと面会出来ないという事情もあっただろうけれど、最期まで自宅で介護を貫いた。

我慢強く、がんの終末の苦しみにじっと耐えていた彼は、6月の初夏を待たずに旅立った。最期まで彼らしく、やっぱり立派だった。