岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス
だんじりが好きな方だった。地車の彫り物がとてもお好きで、そのレプリカが自慢げに玄関に飾られていた。
66歳とまだ若い。膵がんが見つかった3月には肝転移もあり手術は出来なかった。化学療法も無効で、積極的な治療はもうできないと告げられた。でも免疫治療やカテーテル治療にまだ望みをつなげていた。
5月、在宅ホスピス導入直後は、ソファーで対応してくれた。「こんなに元気なのに来てもらって悪いね」と笑った。「もう少し、ご飯が美味しく食べられたら嬉しい」と言った。1週間もしないうちに高熱が出た。心窩部痛に、便秘に、嘔気に苦しんだ。点滴をし、処置をして病状は一旦安定した。しかし、しばらくするとまたそれを繰り返した。
毎日看護師が訪問するので、いろんな話をしてくれる。照れながら奥様とのなれそめや、趣味の車の話をしてくれるが、中でもだんじりの話をする時は目がキラキラして少年のようだった。
7月、急にがん性疼痛が強くなった。モルヒネの使用量が増え、生活上あらゆる事に手助けが必要になって気持ちが萎えた。土曜日には元気に会話したのに、月曜日の朝から連絡があり、到着時にはもう呼吸は止まっていた。あまりにも急だったけれど、「彼らしいわ、存えるのは辛いばかりだから」と奥様がぽつりと言った。とても寂しそうだった。