岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス
右上葉肺がんから6年。今度は頸部食道がんが出来た。以前の放射線照射した場所が近いことや、術後の抗がん剤がかなり辛かったこと、手術となると84歳の身体には侵襲が大きすぎることなどから、打つ術もなく末期状態と診断された。
食道は経鼻内視鏡が何とか通過できるほどの内腔しかなく、食事も通らなくなっていた。ステントで広げてもらったものの、違和感が強く誤嚥も多かった。中心静脈栄養のルートも造設されたが、がんはさらに気管に浸潤して呼吸困難感も出てきていた。
自宅で療養する覚悟が出来て、訪問診療が始まった。準備された介護ベッドの上でニコニコしている。苦しかったはずの呼吸も楽で、痛かったはずの喉も「痛くないわー、不思議」と笑った。擦れた声で話していると唾液がたまってくる。家族に吸引などのケアの方法を指導。訪問入浴も計画して、嬉しそうだった。
けれど病状はやはり厳しかった。3日後には起きていられないほど呼吸困難となり、鎮静をかけざるを得なかった。日曜日1日かけて、親戚みんなが会いに来た。総勢32名。順番にお別れの挨拶が終わった頃、静かに静かに呼吸が止まった。