岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス
東京ディズニーランドは夢の国。私も大好き。何度となく足を運んだ。36歳の彼女も同じ。行くということを計画するだけで胸が躍る。
8年前に発症した大腸がん。手術を受けたが、再発。肺や骨、腹部のリンパ節、腹膜、副腎に転移していった。病状が悪くなる度に入院したが、彼女には小学生の男の子がいて、その度に寂しい思いをさせた。出来るなら、傍に居てやりたい。病院への通院と併行して在宅ホスピスが始まった。
痩せてはいるが、がんの末期だとはとても思えない。可愛い笑顔が、がん性疼痛や貧血や薬剤性肝障害で苦しめられるのは、診ている私達にとっても辛い。「基本、薬嫌い」と言って飲まない。でも.適切な薬をきちんと飲んで楽な状況を作ることは大切、私達を信頼して、と説き続けた。痛みやしんどさも少しずつ分けてくれるようになり、息子さんの成長も一緒に楽しんだ。でも一方で病巣はさらに広がり身体を蝕んでいった。
なんとか1年が過ぎ、痛みのコントロールが難しくなってきた頃、「この春までの命」と主治医から両親に告げられた。ディズニーランドに行こう、ずっと行きたがってたんだから今行かなくちゃ。コロナ禍で閉鎖されていたのに不思議と開園されることになり、「こんな時くらい優遇を使っちゃえ!」と、車椅子で、2泊3日で、10日後には出発した。思い出もいっぱい、お土産もいっぱい。息子さんはきっとずっと忘れない。
旅行話も聞かないうちに、別送土産も解かないうちに、まるで今まで押さていたものが噴き出すかのように胸水腹水が湧き、動けなくなった。痛くなって、薬使って守ろうと頑張ったけど、限界だった 。旅行から5日後、静かに心臓が止まってしまった。精一杯生きた、最期まで綺麗だった、でも悲しかった、淋しくなった。