医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その66令和2年9月27日

「もういつお迎え来てもらってもいいんよ」と、開き直った言葉の裏に、生への執着が見える。お酒もタバコも大好きで、自由奔放に生きてきた76歳の彼女は、20年以上糖尿病と闘ってきて腎症を発症していた。腹痛のため受診し膵がんを指摘された。既にかなり広がっていて、抗がん治療も諦めなければならなかった。

常に嘔気があり、好きな物ですら受け付けない。それでも、中心静脈栄養のルートをバッグに収めて動き易くしてあげると、俄然元気が出て、1泊旅行も敢行した。温泉に浸かって、贅沢三昧の食事!クエにアワビに伊勢エビ…、食べれちゃったぁ、楽しかったぁ、と笑ってた。

日常に戻れば、痛みやしんどさとの闘い。思うように動かなくなっていく身体を持て余し、大した量も食べられないご飯のことを考える。好きな物は炭水化物ばかり。糖尿病の敵だけど食べられないでいるより良いか?!でも血糖は跳ね上がる。インスリンの調整が難しい。咳が出て息苦しい。在宅酸素を導入して、タバコが吸えなくなった。食欲をかろうじてそそっていたインスタントラーメンもフライドポテトも吐いてしまうようになった。

2週間後。痛いわけじゃない、でもお腹は重くて辛い。ずっと目をつむって過ごし、時々愛想笑い。なんでもない日常会話を努めて明るく話す。目尻に一筋の涙。さよならの時間が迫っているのを知っている。翌朝、静かに息が止まった。