医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その33平成28年3月15日

4年に1回しかない2月29日、1年がかりで続けて来た抗癌剤治療が終わった。まだ膵臓や肝臓や骨に病巣はしっかり残っていたが、もう次の治療法はなかった。家で看てあげたいという奥様の希望もあって、彼は在宅療養を選んだ。

退院してきたその日が訪問初日。49歳の彼は、元気そうに見えた。出来る事は全部自分でやると言った。「この先の不安はないよ。」確かに初めは、見守りだけで入浴できていた。「終活を考えている。後に残る者への配慮やな。」と笑ってみせた。この後急速に病状が進行していったので、いったいどんな準備を思い描いていたのだろうと、今となっては思う。

奥様と近くに住む実のお母様が、それぞれの思いで介入してくる。痛くないか、寒くないか、よく眠れているか。これ食べて、あれ飲んで、好きなものを摂れているか。点滴はしないの?インスリンはどれだけ打てばいいの?全てにおいて、いつもの2倍説明しないといけなかった。

娘様二人と奥様が、いつもベッド周りで戯れていた。娘達は、学校での様子、友達のこと、勉強のこと、彼の手浴や足浴をする母親を手伝いながら、ずっとおしゃべりしていた。

痛みはほとんどなかった。苦しいとも言わなかった。だからかな、彼が時々吐くふーっというため息にも似た息に、介護者は右往左往した。愛情一杯受けて長かったように記憶していた療養は、たった2週間だった。