医療法人にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その35平成28年5月27日

胃を2/3切ってからも、2年間はまるで元気だったと言う。切除後の抗がん剤をせずに、好きな事だけをして夫婦二人で過ごしたと言う。ここ3ヶ月で、お腹がパンパンに張ってきて、鈍痛を感じながら我慢出来るところまで我慢して、近くの医院に医療用麻薬を出してもらっていたらしい。いよいよ食欲も落ちて、全身倦怠感も強くなって、病院に入院しても余計にイライラして眠れなくなって、在宅ホスピスを申込んできた。

病状は深刻で、腹膜播種でお腹の中はがん細胞でいっぱいだった。腹水を抜く事は簡単だったが、1-2L抜いても次の日には戻っていた。タンパク質も一緒に腹水に漏れ出てしまうので、どんどん体力が奪われた。痩せた。

自分の愛する家族に囲まれて、自分が生きてきた空間の中で、最期の瞬間までいつも通りに生活をすることが理想。しかし、現実はそう甘くない。足元すらしっかりしないのに、いつも通りの手順で入浴したがる彼に手を妬いた。手助けや工夫を提案するが、一切聞き入れない。亭主関白そのままで、奥様に命令する。黙って従う奥様とは、阿吽の呼吸なのだ。それでも、元気な自分をみせようとしてくれる健気な笑顔に、私達は救われていた。

お付き合いできた限られた時間は10日間だった。やれるだけの精一杯の献身はした。「後悔なんてこれっぽちもない。」奥様がそう言いながら、はらはらと泣く。彼の喪失感は奥様にとってとてつもなく大きい。