医療法人にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その21平成27年1月31日

戦前から残っているというお屋敷には、木の引き戸をカラカラと開けて、風情ある庭を通って入っていきます。87歳になる彼は、この肺がんが発覚するまで一度も入院したことがなく、健常な身体にしっかりとした学問が宿るという通り、地質学者であり、しかもその道で高名なお方でした。1ヶ月前、軽い風邪引きが抗生剤投与では治らず、精査の結果肺がんと診断されました。年齢的な事から積極的な治療は希望されず、在宅ホスピスのため紹介されてきました。

同い年の奥様と、美しいお嫁様が甲斐甲斐しくお世話をなさいます。少ししか召し上がらなくても、きちんと3度お食事を作られます。掃除が行き届いた和室の障子から柔らかな光が差し、息子様が髭を剃ってあげていました。何もかもが初めての事、ケアマネも、介護ベッドも、紙おむつも、褥瘡予防マットも、浣腸も、足浴も、訪問入浴も…。矢継ぎ早にあらゆる介護サービスを使って療養体制を作っていく私達に、賢い彼らは理解してうまく利用して下さいました。

お肉とゴディバのチョコレートが大好き。点滴大嫌い。「頑張って食べます」と仰っても十分に摂れず、2回/週だけ補液をさせて頂きました。代わる代わるお世話してくれる家族に囲まれ、幸福な時間を2ヶ月も過ごされました。

その日、車椅子で食卓に着き「お粥の味が薄い」とか団欒した後、ベッドに戻るとそのまま息を引き取りました。日常の中で、いかにも自然に、彼は逝きました。