岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス
79歳ともなれば、食べられないから点滴、そのために入院、という流れでは、認知機能が低下してしまう方が多い。彼もご多分に漏れず、7年前から闘ってきた胃癌が浸潤して腸閉塞を起こしかけているために食べられないのだけど、点滴していくらか脱水症状が緩和されても、認知症が出てくる。「いつものお父さん」でなくなるのは、娘達にとって何より辛い。家に帰りたがる彼。働いている娘さんが何処まで在宅で看れるのか、一つの挑戦だった。いつから仕事を休むべきか、時期を見極めるのはとても難しい。
お風呂の好きな人だった。だから、中心静脈栄養を選択した時も、もちろん皮下ポートの埋込みをお願いした。それで極端な脱水症や痩せはなくなる。持続で高カロリー輸液を入れ、2日毎に抜去して入浴した。痛みを隠して我慢してしまう人だった。痛みとうまく付き合うには、我慢せず、正しく評価してもらって、医療用麻薬の総量を決めていくこと、適切にレスキューの薬を飲むこと。モルヒネの量を微調整しながら、痛みは完全にコントロール出来ていたと思う。
家での生活を悠々自適に送っていたのに、急にテレビを見なくなった、犬の散歩も止めてしまった。そのタイミングで、娘さんに介護休暇を取ってもらった。
実の親子が一緒に住めば、喧嘩もする、言い合いもする。でもそれが日常。亡くなる日の朝も、入浴させてもらった。丸2週間、娘さんにしっかりお世話になって、彼は旅立っていった。