岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス
B型肝炎ウイルスに罹患して長かった。肝硬変になってしまった6年前から、次々と肝がんを発症した。その度に血管内治療や外科的切除術を受けてきたが、今回のは急速に進展する強力なヤツで、おそらくもうやっつける手段がなくて、やっつけようとすると彼女自身の身体がダメージを受けてしまうという厄介さだった。
70歳の彼女は、まだ身の周りのことは自分で出来る、と外来通院していた。大阪の病院まで、何かある度に受診するのは大変だったから、ちょっとした風邪の咳や便秘に対応するだけで喜んでくれていた。でも、外来では限りがある。一度は真夜中だったので、救急車で元の病院まで搬送してもらったらしい。けれど、入院するほどでもなく帰されてきた。すごく疲れたという。そして相談を受けた。「もう限られた時間しかないのだったら、家で看てあげたら?」在宅診療を勧めても、「そんなことが出来るのか」と、初めはみんな半信半疑。
訪問を始めて3週間。亡くなる3日前まで、自分の足でトイレへ行き、入浴出来ていた。酸素はずっと流用していたし、適宜点滴も浣腸も必要だったけれど、最期まで彼女らしく生活出来ていた。寝付いて2日、苦しむ時間は最小限で逝った。「先生に来といてもらって良かったわ」と旦那様が言ってくれたのが印象的だった。家族の長い闘いの日々が終わったのだ。