医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その56令和元年11月7日

大きな病気もなく81歳を迎えて、急に両下腿が浮腫み始めて胃がんと分かった。見つかった時には、多発リンパ節転移も肝転移もあったが、抗がん剤治療は頑張った。しかし、その副作用に苦しみ、段々と効かなくなってきて、在宅ホスピスを希望された。軽い認知症があったので、家人がサービス付き高齢者向け住宅での療養を希望された。

家みたいに過ごせる環境で、彼は彼らしく日常を楽しんでいた。浮腫や痛みに関しては薬でコントロール出来ていたし、閉塞症状もないので食事も楽しむことが出来た。釣りが趣味で、施設のスタッフや知人に連れ出してもらって海にも出かけた。鰯、鰺、太刀魚が釣れたと喜んで報告してくれた。

時々風邪を引いたり、浮腫が酷くなったりしながらも、約3ヶ月が過ぎた。定期訪問診察日に「明日、もう一回釣りに連れてもらうねん」とはしゃぐ彼は、「多分最後やと思う」と寂しそうに付け足した。

翌日病状が急変した。朝トイレに行ったまま、そこで動けなくなった。ベッド上で安静、ウトウトしながらでも返答はしてくれる。家人の介助で少し食事も摂る。でも、もうあんまり時間なかった。あと一日、欲しかった。その日のうちに、彼は旅立った。