岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス
左足の裏に出来た小さなホクロ、それが彼女の闘病の始まりだった。36歳で悪性黒色腫を発病した。まず左足底の腫瘍を広く切り取り、欠損した部分への植皮、リンパ節切除と手術を繰り返した。抗癌剤も色々試し、副作用に苦しんだ。いいと聞く病院には全国どこにでも行って、温熱療法、精神療法、免疫療法を受けた。そう、うちのクリニックに来たきっかけも、「星状神経節ブロックが免疫力を高める可能性がある」と聞いたからだった。
様々な治療法を持ってしても、左下肢には小さな転移巣が無数に出現した。大小様々、深さも様々。彼女は1つ1つ切除して欲しいと外科医に頼んだ。1回におよそ5ヶ所ずつ、幾度となく根気よく、切除は続けられた。
彼女はあきらめなかった。1週間に2回はブロックに通ってきた。傷だらけの左足を見せてくれ、明るく言った。「あきらめないでいようと思って。」なのに、骨にも、脳にも、神経にまで病巣は広がっていった。
ある日「痛くて動けないの、先生助けて」と連絡してきた。ついに癌性疼痛が始まったのだと思った。痛みで車から出られない彼女の肩に、モルヒネを筋肉注射した。痛みがすーっととれて、いつもの笑顔に戻った。
彼女は看護師だったから、在宅ホスピスの意味もよくわかっていた。歩けなくなった時、家で療養したいと願った。中学生の娘と高校生の息子の傍で、泣きながら死んでいった。「まだ頑張りが足らんみたいや…。」と