医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その81令和4年1月25日

90歳の彼は、いつもほやっと笑う。そして、えーっと思うような無理難題を言ってくる。ちゃんと歩けないのに、トイレに行く、窓を開けに行く、冷蔵庫を覗きに行く。よろついて額から流血、脇を打って肋骨骨折。傷の手当てに大わらわ!でも次の瞬間に忘れている。認知症のせいだ。食べたいときに食べる。真夜中のプリン、カステラ、リポビタン。認知症のせいだ。訪問診察の時はいつも、暖かいお布団にくるまって寝ている。声をかけると、「おー」と、ほやっと笑う。低酸素なので在宅酸素入れているが、大抵外している。咳をするが、苦しくないらしい。「どっこも痛ないよ」「朝早いのに、なんや!?」今、真っ昼間だよ。

慢性骨髄性白血病なので白血球が10万近くある。軽い心不全があるが、他は何も異常がない。一体何で、最期を迎えるのか?と考えるほど元気に2ヶ月が過ぎた。

夜中にゴソゴソして、介護者である妻を大いに困らせた。もうギブアップ寸前だった頃、思うように動けなくなった。ベッドの上まで戻れずに下で丸まってるとか、トイレに2時間座ったままとか。ほぼ毎日、1日何回も、訪問看護師が呼ばれた。やがて、口に入れてもらったパンも飲み込めなくなった。

2日前、妻が口に入れたカステラを「旨いな」と言って、ほやっと笑った。幸せそうに可愛いらしく。こんな風に迎えたい、そう思えるお最期だった。