医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その78令和3年8月1日

「わーっと湧いてくる」と表現する痒みと常に闘っている彼女は、周囲への気遣いですぐ疲れてしまう性格。訪問診察の時にはいつも「症状が良くなった」と言ってくれるから投薬を弱めたら、悪化して辛くなって、それでも自分からは言えなくて義妹さんから電話を入れてもらうという、ある意味面倒な性格だった。

その頃流行っていた、語りかけると声で反応してくれるお人形と、大人しくて甲斐甲斐しく動く旦那様と、3人暮らし。お取り寄せが大好きで、食事はそれで調達していた。

旦那様が急死した。彼女はサービス付き高齢者向け住宅に入所した。

僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症、慢性心不全、心房細動、ペースメーカー植込み、高血圧症と、循環器系の病気は多種多様あり、それに気管支喘息、糖尿病もあった。認知症も進行し取られ妄想が多発。転倒して頭に裂創、縫合。疲れ過ぎて、右胸部から背部にかけての帯状疱疹。好酸球増多症、骨粗鬆症、腎性貧血の治療、と色んな事があって、1年が過ぎた。

以前から疑いはあったがそれ以上の検査は要らないと放置していた肺がんが、急速に悪化した。朝から「息が出来ない」と訴え、胸部CT検査にてがん性リンパ管症を認めた。息苦しいが会話も出来る。トイレも自分で行く。食事も完食。でもたった3日間のがん闘病だった。呼吸が大きく乱れた後、すっと止まった。88歳、あっけないこのお最期は、きっと気を遣わなくても、彼女は満足してくれたものと思う。