医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その72令和3年3月27日

77歳で前立腺がんが見つかった。治療をちゃんとしたが完治は出来なかった。急に命を取らないけれど、経過は長くなった。14年経った今もお元気で、認知症が着実に進んだ。

身の周りの事が自分達だけで出来なくなって、7年前にご夫婦一緒にサービス付き高齢者向け住宅に入所した。二人とも大人しく穏やかで、可愛らしい笑顔が素敵だった。

認知症が進むと、自制心がなくなり欲が全面に出てくる。食欲あり、3時のおやつは必ずたっぷり頂き、食事もいつも完食だった。金欲はなかったが、色欲はあり、若い看護師さんにはちゃんと顔を上げて受け答えするのに、私には素知らぬ顔。もうちょっと若ければなぁ、と思った。

日中ほとんどベッド上生活で、入浴や食事の時だけ車椅子に移される。姿勢はちゃんと保持出来て、テーブルに向かっている。たまに、そのままうたた寝しているけど。

入所中には、何回かは発熱して気管支肺炎を煩い、家族に危篤と知らせた。でも、点滴治療ですぐ回復した。入浴後にはよく意識消失発作があった。そんな彼が91歳になって、ある日急に食べなくなった。看護師に笑顔を見せなくなった。点滴したリ、何かしら出来る事を探しながら、5日後、静かに心臓が止まった。この自然な経過は判っていたし、死は避けられない結末だと知りながらも、ただ無性に淋しかった。