岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス
97歳の彼女は、23年も前から血小板増多症にて抗がん治療を受けていた。それ以外には異常も無く、血圧が少し高いだけで、足腰も達者で、認知機能も保たれていた。それでも2.3ヶ月毎の通院が辛くなってきていた頃、白血病への移行が判明した。更なる抗がん治療は望まなかった。超高齢者となった今、息子様も70歳台。ご夫婦でご自宅で看てあげようとしたものの、気位の高い彼女は、「私は元気よ、この人たち何しに来るの?!」と、訪問診療を拒否する。耳が遠くなり、思い込みも激しく、気丈ではあるが認知症が始まっていたのだ。
食事はほとんど摂ろうとしない。仕方なく栄養剤を処方し、水分代わりに飲んでもらう。適宜補液する。白血球数はずっと10万前後、きっとちゃんと働いている白血球は少なく、感染症が命取りになる。状態を観察して、抗生剤を適宜投与する。訪問すると、相変わらずすっごい怖い顔して怒っている。でも診察して、息子様と今後どうしていくかを何度も話し合い、時には浣腸や点滴の処置、時にはお身体を拭いたり着替えを手伝ったり、そうこうして帰る時にはいつも、黙って手を合わせてくれていた。
長く続くかと思われた在宅ホスピスだったが、3ヶ月半で急に容態が悪化した。最小限の点滴を3日続けたあと、すっと呼吸が止まった。眉間の皺が消え、優しい穏やかな表情。ずっと気を張って生きてこられたんだ、思わず「お疲れ様でした」と手を合わせた。