医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その70令和3年1月20日

若い人のがんは、最期のその時まで「末期」という言葉を使いたくない。いつも奇跡の逆転劇を夢見て、在宅療養は始まる。

T細胞性リンパ芽球性リンパ腫という厄介な血液のがんの彼は、まだ26歳。でも結婚もして子供も授かっていた。コロナ禍の中、入院していては会えなかった、まだ1歳にならない息子を抱きしめるために、家に帰ってきた。血球貪食症候群、つまりどんどん血球が壊されていってしまう病態になっていて、輸血などの補充を止めたら、残された時間はもうほとんどなかった。「家族や大切な人に会いたい」「お寿司を食べたい」「子供のためにビデオレターを撮りたい」「結婚式を挙げたい」。退院してやりたいことは後を絶たなかった。

腰痛や身体のあちこちの痛みが彼を苦しめた。医療用麻薬を上手く使う。怖がらずに大胆に適正に使う。しっかり指導した。こんな時でも食べた分便は出るので、その対処に追われた。きれい好きで、お風呂も訪問入浴サービスを使って入れてもらった。少しでも病状を軽くするため、不安を取るため、看護師は1日に何度も足を運んだ。

たった6日間。家族とたくさんの友達にありがとうを言った。食べたかったものは全部、食べた。結婚式も挙げた。短かったけど濃い人生を、しっかり締めくくった。