医療法人にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その62令和2年5月7日

一昨年の夏だった。たくさん病名があって色んな病院に通院している、いかにも一本気な大工さんが外来に来た。「腰はずっと前から悪いから、今更注射くらいでは治るまい」と頭から決めつけていて、だったら注射希望で来なかったらいいのに。でも、一縷の望みにすがりたいくらい痛いのかな、と思い硬膜外ブロックを施行した。効かない!ずっと痛い!と怒っている。考えたのは骨転移だった。予感は的中した。

それが肺がんからだとわかり、専門病院で抗がん治療を頑張った。1年3ヶ月経った頃、左足がほぼ動かなくなって、在宅ホスピスを希望して紹介されて来た。80歳になっていた。

自慢の息子さんの話をよくしてくれた。後を継いで欲しかったけど、本人が大学に行くと言った、今は堅い仕事についてバリバリやってる、誇りだと。嬉しそうに話す、その表情が優しくて潔くて素敵だった。

麻痺した左下肢が丸太にように浮腫み、それが腰まで及んで寝返りすらままならなくなっても、泣き言ひとつ言わなかった。少し認知機能の低下し始めた妻を見守りながら、介護サービスをフルに利用し、ほぼ毎日の訪問看護で支えてもらいながら、約3ヶ月間の闘病を終えた。息子さんのご家族に囲まれながら、少し口角を引き上げて「無理して笑ってる」って丸わかりの顔で、この世を去っていった。