医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その13平成26年3月29日

85歳の、つましいひとり暮らし。棚にこけしとか並べてあって、ガラスの付いた水屋に食器が並べられていて、昭和の臭いがしていた。急須でお茶を煎れながら「ちゃんと水分は摂ってますよ」と笑う。おこたに足を入れて、そんなレトロな居間で談笑していると、診察なんて忘れてしまう。だめだめ、出血していると訴えているところを診なくっちゃ…。

大学病院で、外陰癌と診断を受けてから2年あまり、一人でこのおうちから通院して治療を受けてきた。根治が望めなくなってうちに紹介されてきてからも、半年以上外来通院してくれた。やがて、排便の時に気張るだけで出血し、いつも下着が血で汚れるようになり、貧血でふらつくようになった。そうしてやっと「来て欲しい」と希望され、在宅診療が始まったのだ。

見た目にはお元気で、糖尿病や骨粗鬆症についても、きちんと治療を続けていた。自分でトイレに行けて、入浴ができていた。細かいところの保清は看護師が手伝うことで、気持ち良く生活出来ていた。しかし、風邪を引いて咳き込んだのをきっかけに、自力で起き上がれなくなった。試行錯誤して、サービス付き高齢者住宅に入った。

入居してからもマイペースな生活は守られた。お友達も出来て、部屋に遊びに来てくれてた。痛みに対し医療用麻薬を使い始め、出血を止めることに最大の努力をした。穏やかな最期は約1ヶ月後にやって来た。