医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その12平成26年2月20日

ある夏、急に顔や上肢が浮腫み始めた。まだ65歳だった彼女は、気になりながら、放っておいた。あまりに続くからと検査を受けた結果、11月にやっと肺癌と診断がついた。抗癌治療が始まった。少しは小さくなるものの、完全には無くならない腫瘍の大きさをずっと追っかけながら治療は続いた。胸水が貯まって、腫瘍がむしろ大きくなった。”副腎”に転移巣が見つかり、ようやく治療中止となった。3年が経っていた。

問題は、副腎増大による痛みだった。肺癌も大きくなって、呼吸苦、食思低下を起こしていた。当クリニックに紹介されてきた。まずは大量の飲んでいない薬に驚く。便秘薬でさえ、買った薬を飲んでいたと言う。医療に不信感を持ってるんだろうなと思った。痛みのコントロールに薬は不可欠、家族や看護師と連携しながら、まずは定期的な服薬を確立した。いつもしかめっ面の眉間のしわが、少しずつ消えていった。

毎日、コタツに潜るように入って韓国ドラマを見ていた。一見、普通の「大阪のおばちゃん」だった。自分の症状に一喜一憂して、かわいい人だった。食欲も出てきていた。小学生の孫達に、「行ってらっしゃい」「おかえり」を言ってやるのが、彼女の仕事だった。

昨日のオムライスも完食で、韓国ドラマも笑って見ていた。何っていう事ない日、彼女はお昼寝のまま起きてこなかった。

「痛がらなくて良かった」とご主人は言ってくれたけど、もう少し時間が欲しかった。私達がお世話させて頂く時間、もう少し欲しかった。