医療法人にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その28平成27年8月11日

寿司屋の女将さんだった彼女はきっと、割烹着着て気っ風良く、お客さんの人気者だったと思う。ほやっと笑う穏やかな表情は、長い闘病生活の中での諦めのせいだけではなく、赤血球や血小板の輸血をし続けなければ生きられない自分の宿命を見透かしてのものかもしれない。

旦那様は、1階の寿司屋を切り盛りしながら、合間合間に、2階で療養中の彼女を覗く。3度の食事の前に血糖を測り、インスリンを打つ。食べやすく刻んだり擦り潰したりした料理を彼女の口に運ぶ。トイレの介助、入浴の段取りと介助、洗濯、ヘルパーさん達に助けてもらいながら、彼女の日常の全てに手を貸す。「苦労さしましたさかい、しょーがおまへん。」と、愚痴一つ口にしない。「再生不良性貧血」という病気は、管理がきちんとされていれば、なかなか命までは取らない。だけど、体力が落ちて、痩せて、寝付いてしまう。自分では身の周りのことがほとんど出来ない状態で、夫をはじめたくさんの方々のお世話になって生きていることは、68歳の彼女にとっても辛かったろう。世話好きの彼女にとっては、尚辛い現実だった。

「ありがとう。」声に出せなくても、口元で唱えるように彼女は言う。久しぶりの38.0度の発熱で、また少し体力が奪われた。娘さん夫婦がお盆休みで帰省中、その日を選ぶかのように彼女は逝った。朝、冷たくなっていた。最期くらい旦那様に迷惑かけずにと思ったのかな。