医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その51平成29年8月31日

膵臓癌が見つかって、もう5年になる。何度も命さえ諦めかけたが、復活していた。「母はもう一回元気になります!」と無理を承知で言う。期待を込めて、そう口にすることが奇跡を起こしてきたのかもしれない。一方で遺言書の作成を進める。極めて正当な動きだけれど、切なさがこみ上げる。

80才の母は頑張る。好きなものをリクエストして、お取り寄せや季節外れの果物をねだる。無理難題を言い、精一杯甘える。52才の娘も頑張る。衣食住まるで一心同体。母が寝ている隙に自分も休み、食事をしている間にさささと済ませる。医療側も頑張る。様々な鎮痛剤を使い栄養剤を用い、元気にする努力をする。過不足なく補液する。できる限り自立できるよう、環境を整える。

それでも緊急に看護師にコールしてから待つ間、痛い。遠のきますようにと手を当てる。家族が出来ること、家族にしか出来ないこと、くまなく探す、何でもやる。

丁度1ヶ月して、少しずつ意識レベルが落ちていった。夜しっかり休んで日中起きて、メリハリ付けたことで、家での生活も楽しめた。母と娘のお別れも十分出来た。

夕方、落ち着いた声で、「今、呼吸が止まりました」と連絡があった。

大好きだったお着物を着せた。前の模様が見えなくなるから、と左前に着付けた。美しく笑っていた。