医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その11平成26年1月12日

4年前、まだお正月明けの慌ただしさが残る1月、如何にも肝臓の悪そうな顔色と大きなお腹を抱えて、不機嫌な表情で彼は私の前に現れた。50年前、頭のケガで輸血をしてC型肝炎になったという。5年前には脳出血を起こしていたが、麻痺はなかった。腹部の精査をすると、著明な肝硬変、腹水そして食道静脈瘤と、C型肝炎の最悪経過を辿っていた。肝癌の発生はまだなかったが、癌マーカーの上昇を認め、精査するに至り中咽頭癌が見つかった。何度も肝性脳症を起こしながら、中咽頭癌に対し放射線療法を受けた。次に、胃の不調から胃カメラ検査にて早期胃癌が見つかったが、内視鏡下で切除出来た。

他に糖尿病もあった。ラッキーにも癌は克服出来ていく。それでも、いくら説得しても飲酒を止めてはくれなかった。やがて、肝硬変に肝細胞癌が発生した。結局、これが致命的になった。あっという間に右葉全体に広がり、門脈を詰まらせ、腹痛と大量の腹水が彼を苦しめた。通院さえ出来なくなって、亡くなる前約1ヶ月だけ在宅診療となった。さすがにお酒は飲まなくなっていたが、好きなものだけ食べて、好きな時間に起きて、という自由ぶりだった。

痛みのコントロールは出来ても、身体の倦怠感だけは取ってあげることが出来ず、彼も「これは自業自得」と笑っていた。71歳同い年の妻が、「こんな早くに逝ってしまって…。今度生まれ変わったらお酒飲んだらアカンで…。」と泣きながら頬にキスしていたのが、印象的だった。