医療法人にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY

「好き」に囲まれて平成23年11月30日

sukinikakomarete

お待たせしないように予約制にしているのに、いつも約束の時間に診察できない。混んだ待合室で、彼はいつも単行本を片手に座っていた。「首が痛い」で初診、星状神経節ブロックを1ヶ月して軽快。やがて「血圧が高い」ことが判り、定期的に降圧剤の処方が始まった。いつも禁酒、節酒と目標は高く掲げるけれど、実行できた試しがない。それでも、半年毎に受ける検診では特に大きな異常もなく、5年が過ぎた。

急に、「味覚がおかしい」と言いだした。便潜血検査が陽性で大腸カメラしてもらったが正常だった。出血源はないと言われたが、急に貧血が進んだのを理由に、もう一度消化管内視鏡検査を勧めた。結果、進行型食道癌だった。

手術は成功!元気になって、再び通院。「食事も美味しいし、眠れているよ。」「食事しても咽せないし、声も嗄れていない。」きせきを願った。このままずっと元気で…。

1年後、再び重症貧血出現。病院の外来に通院しながら抗癌剤も続けていたけれど、再発した。けだるさが抜けない。食事を受け付けなくなった。抗癌剤をやめる勇気がない。どんどん衰弱していく彼を見かねて、娘さんは娘さん宅での在宅ホスピスを選択した。

1ヶ月ちょっとしか時間はなかったけれど、好きな音楽を聴き、好きな本に囲まれて療養した。好きなものだけをちょこっと食べて、好きな時間に寝ていた。少しでも長くお孫さんたちと過ごせるようにと、家族が集まる居間にベッドを移そうとした前夜、彼は眠るように旅立っていった。「安らかな最期」は彼との約束だったから、穏やかな顔に救われた気がした。