医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

ご予約・お問い合わせ/tel:072-448-6644

DIARY

ともに働き平成23年8月23日

tomonihataraki

「左の奥歯が痛むんです、虫歯もないのに。」それが彼の訴えでした。痛み止めが全然効かなくて、歯の治療を無理やりしてもらったのですが、何ら変わらなかったそうです。いつも飲んでる薬は?と訊くと、糖尿病でインスリンを打っているとか、2年前に胃癌で胃切除術を受けてフォロー中だとか、首が痛くて整形外科にもかかっているだとか、出してもらっている薬は山のようにありました。大人しくいつも控えめに微笑んでいる印象の彼は、自分ではどうまとめたらいいのかも判らず、“痛み”というキーワードで紹介されてきたここでの精査の結果、それらの原因が癌の再発によるものだと知らされたのでした。

軽い咳が続いている、そういえば胸が重苦しい。切除したはずの胃癌は、肺と左鎖骨上や縦隔のリンパ節に転移していました。すぐに手術をして貰った病院で抗癌剤が再開されましたが、転移巣の勢いは止まらず、2週間もしないうちにしんどくて飲めなくなりました。左下顎や側胸部の痛みが強くなり、麻薬性鎮痛薬も始まりました。彼は、在宅ホスピスを望みました。

生真面目に一生懸命共働きで働いてきて、自分たちで立派なお家を建てたそうです。ここで2人の子供を育て一人前にしたそうです。72歳の今、定年退職してから自分の人生にゆとりを探そうとしていた矢先だったそうです。

在宅療養中、出来るだけ自然に生活を送るよう健気に努めていました。奥様はいつも通り仕事に行き、ホントの最期の時間を一緒に過ごせるよう段取りに奔走していました。でも、お別れの時はすぐ来ました。在宅ホスピス開始から2週間足らずのことでした。