医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その16平成26年6月26日

骨髄腫という血液の癌。すぐに命は取らないものの、貧血や血小板の減少を起こすため、輸血を繰り返さざるを得ない。86歳のやせ細った身体には、輸血のために毎週大きな病院に通院するのさえ、重労働だった。彼女が日に日に弱っていく姿を見かねて、相談があった。「輸血だけなら、自宅でも出来るよ…。」と、訪問診療が始まった。

血液検査の異常は血液像以外には何にもない。内臓は達者だ。食べれるし、話せるし、少しふらついてるけど歩けるし。しっかりした口調で「今日は気分がいいです。」「今日はお腹がおかしいです。」と、自分の体調を教えて下さる。便通や食事量、飲水量なども管理させて頂きながら、彼女は生き生きと過ごせていた。輸血前はぐったりしていても、輸血後はまるで生き返るみたいに元気になられた。

それでも段々、輸血しても全身倦怠感が残るようになった。「私、もうすぐ死ぬのね。」「なんだか、とても寂しい。」と、心の内を吐露してくれた。医療の手段を持って、出来るだけの事はする。そして、ただ寄り添ってうなずくことしか出来ない。人生には誰にも終わりが来る、その日その時まで、笑っていよう、そんなありきたりなことしか言えない。

輸血が追っつかなくなって、最後の輸血の6日後、彼女は力尽きた。朝4時に呼ばれた。ゆっくり話しかける時間があった。最期の身繕いをお手伝いながら、「お疲れ様でした。」と顔を撫でた。安心した表情に見えた。