医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY

手のメッセージ平成24年5月29日

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彼女は1年半前、胆管、胆嚢、胃と大腸の一部を切除する大きな手術を受け、抗癌剤治療も頑張って、胆嚢癌を克服しました。半年前再発し、さらに抗癌剤治療を受けましたが、その甲斐なく4ヶ月前からは病院の外来通院のみになっていました。その時、その人にどれだけの余命があるか誰にもわかりませんが、癌末期と告知されたならば、せめて自分の足で動けるうちにやり残したことをしたいものです。

75歳の気丈な彼女は、訪問診療の申し込みにも夫と共に訪れました。でも、酸素を流用し車椅子に座って、息も絶え絶えでした。穏やかに微笑みながら、「診て頂けて幸せ」と仰いました。

夫と一緒に入浴した時に苦労していた洗髪や、辛い時の下肢のマッサージ、それを訪問看護師たちが上手に手伝うだけで、「安心やから、妻が明るくなったよ」とご主人は仰いました。薬も指示通り、食事の量が減る中でもきちんと服薬されました。

在宅療養はたったの13日間でした。声も出せないほど苦しい時、手に「ニシダセンセヨンデ」と書かれたそうです。夜明け前、車を走らせました。してあげられることは、“少しでもしんどくないように”することだけでした。

1晩だけ苦しんで、呆気ないくらい静かに旅立たれました。急なことで、皆様が号泣していました。ご主人は「苦しい時間が短くて良かった」と、気丈に微笑んでくれました。もっと長くお世話をさせて頂きたかった、もっと早くご紹介頂きたかった、その思いが無念でなりませんでした。