岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス
闘病してもう4年にもなる。まだ37歳の彼女が、年齢の割にしっかりして見えるのは、そのせいかもしれない。9歳の男の子のお母さん。
子宮や卵巣を切除したのに、1年後には再発。少しずつ広がっていった。お腹の中や足や腰への癌の広がりは、痛みを起こし、食事を食べられなくして、オシッコも出なくしてしまった。それゆえ、持続点滴や、胃や腎臓に直接チューブを差し込む処置を余儀なくされた。身体にチューブがたくさん繋がったままでは、確かに病院から出られそうにもなかったが、「家で息子にお帰りを言ってやりたい」という、彼女の単純で切実な願いから、うちに紹介があった。
まず、身体周りの器械を簡素化した。何もかもリュックに仕舞い込めるように変更した。身が軽くなると、ベッドから離れられた。簡単な家事をこなしたり、近くの“しまむら”へも出掛けられた。夫や息子のために、おそらく普通の主婦が普通にするだろう事、朝食の準備をしたり、ホットケーキを焼いてやったりを、さも楽しそうにやっていた。
病状が進み、痩せた。動くのがすごくしんどくなって、寝て過ごす時間が増えた。「私、もうあかんのかな。」とつぶやいてしまってから、自分で「まだ頑張る。」と言い直した。閉じてしまう目を必死に開けて、止まりがちな息を懸命に続ける。彼女の手を握りしめながら、私は最期の瞬間、傍にいた。もう頑張らなくていい、とただただ祈っていた。