医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その27平成27年6月30日

消化管のがんの場合は、病状の進行と伴に食べられなくなることが多い。最近の傾向としては、退院前に中心静脈栄養のルートが造られる。皮下に埋め込んであるので、針を抜去すれば入浴が出来る。投薬とエネルギー供給が確保されているから、食べる事を無理強いしなくてよくなる。食べて吐かなくてよくなる。

「自分の身体をもっと労れば良かった、バチが当たったんだな。」5年前、お腹が張るため受診した医院で大腸癌と診断された。それから切除術2回と抗がん剤治療を続けて来たが、58歳になった今年、ステージⅣ、もう人生に時間がないと告げられた。それなら、「妻と可愛い娘3人の待つ家で療養しよう」と帰ってきたのだ。

がんの痛みは、医療用麻薬でうまくコントロール出来た。高カロリー輸液を、24時間小型のポンプで心臓の真ん中に送り込みながら、家族でドライブやショッピングに出掛けた。口からは、好きなものだけを味わった。ガムや飴で口を動かすだけで、お腹の張りも楽になり、オシッコもよく出るようになった。

働いていた妻は介護休暇を取り、傍にいるようになった。しんどがったり、急に吐いたりする姿を、毎日目の当たりにしていると辛くなってくる。一時は入院も考えた。でも、独りぼっちを強いるだけだと話した。傍で一緒に闘ってあげようよ、と。

家族みんなが揃って過ごした日曜日、家族みんなで介護した。身体の向きを変えたり、足をさすったり、とんとん背中を叩いて吸引したり。誰もが与えてもらえるとは限らない、もの悲しい、だけど幸せな時間だったと思う。