医療法人にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY2

その10平成25年11月16日

「胃の辺りが重苦しい、食べすぎかなぁ。」軽い気持ちで、近くの医院で検査を受けた。手術が出来ない程の進行胃癌が見つかった。彼女は優秀な看護師で、病院でバリバリ働いていた。活動的で、山登りが趣味だった。写真家の旦那様と一緒に、自然の素晴らしい写真を撮りに行くのが趣味だった。

まだ元気なうちに外来に来て、私に言った。「先生、最期は頼むね。それまでは働かせてね。」いつか訪問診察をお願いに来る、それまでに「旦那孝行で山に行ってくるわ。」美しい笑顔の中に、病気や運命を受け止めようとしている覚悟が見えた。まだ、50歳になったばかり。

やがて、転移病巣と癒着で腸管がうまく動かず吐き気が止まらなくなった。「助けて、先生。お薬も飲めない。何も食べられない。」在宅診療を開始。吐き気は強い薬で治まった。栄養と薬は中心静脈から持続で入れるから大丈夫。一日一日大切に過ごそう。子供や孫にしてあげられることは、もはや“立派に生き抜く姿を見せること”しかない。

それでも、もう一回だけお願いされた。「予定より苦しい。思ってた以上にしんどい。助けて、先生。」少し鎮静薬でぼー-としよう。考え過ぎも良くない。「私、格好悪いな。スパッと最期が来ればいいのに。」一筋、涙が流れた。そのまま娘さんに伝えると、「いいえ、母ほどカッコいい人はいません。」ちゃんと、生き様伝わってるじゃん。

感服したのは、死んだら着せてとネットで買ってあった留め袖。燃やすからもったいない、けれど最期に着物は着たい、の折衷案という。黒いお着物はとても似合っていた。あまりにも切ない、だけど彼女を誇らしく思えるお別れだった。