医療法人葵会にしだJクリニック

岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY

最後のセミナー平成24年11月4日

saigonoseminar

市民病院からの紹介状を持って外来受診にいらっしゃった彼女は、ただ「食べ物があまり喉を通らなくて、点滴でもしてもらおうかと思って。」と、仰いました。右肺癌で肋骨多発転移、脳転移していましたが、歩行は可能で、一見してお元気に見えました。3日点滴を続け、その後は便秘との闘い。外来だけでは到底対応し切れず、4日目には訪問診療開始となりました。

長女様を病気で亡くされてから孫を引き取り小学生3人の面倒をみておられました。そのうち一人は自宅で腹膜透析をしているという大変さの中、家族で唯一の女性である64歳の彼女が、家事のほとんどをやっておられました。旦那様は、慣れない手つきで彼女に指示してもらいながら手伝っておられました。仲のよい夫婦は、いつでも一心同体なんだと思いました。

「死ぬまでに、どうしても受けておきたいセミナーがあるの。」と、彼女が言い出した時は驚いたものの、彼女らしい、是非行かせてあげたいと思いました。2週間のコース、泊まり込み、他県!(大丈夫かなぁ。向こうでICUとか収容されないでしょうね…。)臨時に近くの病院に飛び込んでも、延命処置は不要と紹介状を書いて、車椅子や在宅酸素の手配をして、尿道カテーテルも直前に新しく入れ直して、送り出しました。無事やり終えて帰って来た彼女は、数倍高尚な表情をしておられました。

それからちょうど3週間。人生の幕の引き方まで孫たちに示すかのように、彼女は、周りの皆様、近所の方々にまでお礼を言い、多くの人に見守られ、静かに逝かれました。