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DIARY

新郎の母平成24年10月15日

shinrounohaha

女優さんみたいにきれいな彼女は56歳。34歳の息子さんと32歳の娘さんが、二人とも結婚間近で、結婚式には出席したいと思っている。手術も受けて、1年前には一旦は克服したと思っていた卵巣がんが再発、腸まで巻き込んで広がり、肛門からの出血が止まらなかった。夫も病気がちなため、実家で療養する事になった。88歳の母は、自分で出来る範囲でと言いながら、それを十分に超えるほど甲斐甲斐しく介護した。

出血がそんなにも酷い事は、貧血がどんどん進む事から容易に把握できたが、彼女はひた隠しにしていた。きっと自分でも認めたくなかったのだろう。食事も「ちゃんと食べれています。」の一点張り。本当は水分を摂るのさえ、一苦労だったらしい。

結婚式の日、神戸までドライブ。自分で縫ったという綺麗なドレスを身にまとうと見違えるようだった。新郎の車の後部座席をフラットにして、横になって乗っていった。その後ろを老婆心一杯の私と看護師が軽自動車で追っかけた。行くだけでぐったり、かなり大量の下血、ホテルの1室を準備してもらっていて点滴で繋いだ。教会で式を挙げる間、何処にそんな気力が残っていたのと思わせるほど凜とした姿で参列できた。披露パーティーでも、母としてお嫁様のご親戚にしっかり挨拶が出来た。

その夜だった。新婚初夜を放ってでも一緒に帰りたがった新郎を残し帰って来たその夜、彼女はひとり自分のベッドで静かに旅立っていった。