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岸和田市|内科・ペインクリニック・リハビリテーション科・訪問診療・訪問看護・在宅ホスピス

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DIARY

もっと…平成24年9月23日

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71歳の彼女はまだ若い。結婚していない娘様と、姉妹みたいに寄り添って暮らしている。

3年前、息切れと背部痛で緊急受診して、胸水から肺癌細胞が見つかった。そして今年、脳に転移した。抗がん剤とか放射線治療とか、いろいろな方法で闘ってきたけれど、残りの貴重な時間、もうそんな不毛な闘いには使わずに、家でゆったりと過ごそうと決めた。

元々小柄な彼女は、髪も抜け落ちてしまったせいか、いっそう小さく見えた。名前を呼ぶとゆっくり目を開けて、ゆっくり話す。脳転移している為か少し了解の悪い日もあって、右半身の動きが極端に悪い日もあった。呂律が回らなかったり、何か言いたげなのに言葉に出来なかったり。きっと歯がゆい思いもいっぱいあったと思う。

訪問入浴はお気に入り。最初はもっと恥ずかしがるかと思っていたのに、あまりに気持ち良さそうに入るので、週2回に増やしたくらい。

ある時から、ずっと下血が続いた。おむつ交換にはすっかり慣れた娘様も、真っ赤な便を毎回見るのは辛い、怖い。少しずつ貧血が進み、痩せていく。こまめに食事を口に運ぶと、それに応えるように食べてくれるけれど、追いつかない。聴覚障害のある夫はいつも居間にいて、初めは彼女の病気も私たちの事も忌み嫌ったけれど、ある時から急に優しくなった。「もうすぐお母さん死んじゃうかもって説明したから。」と娘様は悲しそうに笑った。

お看取りの時、「よく頑張ったね」と言った私に、「もっと頑張れるのに…。もっと頑張るから、もっと生きて欲しかった。」と娘様は号泣した。