頑張り
4月26日、お嫁さんが当クリニックに訪問の申し込みに来られました。「今しかないと市民病院の先生が言われましたので、すぐにでも家に連れて帰りたいのです。何とかできないでしょうか?」と、真剣な目で先生にお話されてました。紹介状には、肺癌の手術の既往があり、リンパ節転移、多発性肝転移と癌末期状態で、いつ何があってもおかしくない状態でした。
4月28日、帰宅され、初めての対面でしたが、意外な程外見的には彼は、しっかりしておられました。しかし、その様子は長く続かず、2日後には呼吸困難・痛みがでてきました。
限られた時間の中で、痛みや呼吸苦の軽減、コミュニケーション、保清と課題は沢山あり、家族の方の協力を得ながら、過密なスケジュールの中、手浴、髭剃り等身体に触れて出来るお世話を積極的取り入れて、少しでも彼を理解できたらと思いました。
5月3日、意識も薄らいできました。その日は祝日で、息子さんも、お孫さんも、家におられ、その日の夕方、愛するご家族が見守られる中、息を引きとられました。奥様も、お嫁さんも、それは献身的によくお世話されており、彼も短い時間の中でもとても幸せだったことでしょう。
最期の身支度をさせていただいている間、息子さんはずっと私達の傍におられました。髭を剃ってやりたいと申し出られ、一緒にさせていただきました。その傍らで、お孫さんが涙を流しておられました。彼がどんなにこのご家族に愛されていたか、皆と一緒だったからあれ程頑張れたのだと、そのときふと思いました。ご家族の深い絆を感じ、とても良いお見送りだったと思います。
短い間でしたが、ありがとうございました。心よりご冥福をお祈りします。