ストロベリーキャンドル

95歳の彼女は、はいからさん。「先生好き〜!」と言いながら、すぐに抱きついてくる、可愛い人。娘さんと二人暮らし。気管支喘息や骨粗鬆症や慢性心不全、結構たくさんの病気があるのにお元気だった。階段のない4階の部屋は、自力で上り下りするのに一仕事だったけど、デイケアの利用の度に1階ずつ休み休み、頑張って下りて、上った。いいリハビリになった。

お酒大好き、娘さんと二人して酒豪!である。スナックをしていた娘さんはあて(・・)を作るのも上手で、彼女の作るものを「美味しい、美味しい」と言って平らげる。バレーボールの試合をテレビで観るのが好きで、若い男の子が大好き。元気の源かな。少しはしゃぐと息が切れる。喘鳴が聞こえ出す。胸がきゅんとなって、息を整えるために一旦休憩。狭心症もあるのかな…。でも検査は受けてくれない。

娘さんがクリニックに訪問診療を申し込まれてから、1年半経った春。原因不明の発熱や、まっ赤なおしっこを繰り返した。いろんな検査をして、結局尿管癌のマーカー上昇により診断に至った。それから、お家で過ごしたいと言った彼女を、ほぼ毎日訪問した。段々しんどくなっていく彼女におろおろする娘さん。持続点滴、尿道カテーテル留置、在宅酸素…、入院を何度も考えた。でも家で最期まで看てあげた娘さん。立派だった。

「ありがとう、先生ありがとう。」繰り返す彼女の言葉が、今も、くじけそうになった時の私を励ましている。

心からご冥福をお祈りしています。

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