娘さんは、お母ちゃんがすっごい大事。お母ちゃんがしんどいと言うだけでおろおろ、痛いと言えば尚のこと。背中と腰が痛くなって、慌てて救急病院へ連れて行った。骨へと転移した癌が見つかった。大きく肝臓を占拠しているが、何処から発生したものかわからない。「今更調べてそれがわかっても、治らないのなら苦しいことはさせたくない。」採血検査や身体に負担のかからない検査以外は一切、何もしなかった。
 娘さんは傍で、ずっと身体をさすっていた。ほとんど寝ていない身体では介護も続くはずがなく、日中に弟嫁が替わってくれる時は、自分の家で休んでくる。夕方に来て一晩中、ウトウトしながらも起きてしまうお母ちゃんのお世話をする。「目の前にあると食べたいのに、食べられない。」「口が乾いて辛い。」「身体が痒い。」「しんどい。」鎮痛剤でウトウトしているものの、会話は出来るから、訴えは延々と続く。薬がうまく効いてくれて、痛みは止まった。プリンやメロンなら食べられる。娘さんの介護は甲斐甲斐しく続いた。
 2週間経った。お母ちゃんは身体を盛んに動かし、じっとしていない。ストーブで火傷してしまった。「全く目が離せない。」「何かを訴えているのに、わかってあげられないから、看ていられない。」鎮静のための点滴を始めた。それでもあーあーと声をあげるお母ちゃん。自分の家で起きあがれなくなるほど疲れて果てた娘さん。1ヶ月が限度だった。お母ちゃんは、見計らったように、この世を去った。
 痛みがとれた時、笑ってたお母ちゃん。娘さんの望みは長生きやったけど、お母ちゃんは娘さんに十分してもろて満足して旅立ったと思う。お母ちゃんも娘さんがすっごい大事やから…。
 心からご冥福をお祈り致します。

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